連載「トップホールディングス誕生物語」COLUMN
1964年に父が創業したトップ産業を引き継いで、2代目として歩んできた歴史をトップグループ3社設立とともに振り返り、2023年にグループを統括するホールディングス会社設立までを記した連載コラム「トップホールディングス誕生物語」。 多様な時代背景の中で生きた激動の歩みとトップグループの成り立ちが、お読みいただく皆様の未来につながることを祈りながらお届けします。
【第七章】新会社「優生活」立ち上げまでの大波乱
トップ産業は1981年から、主婦の方々の意見や感想を聞く「主婦モニター会議」を実施してきました。どんな商品が求められているかを知り、消費者の方々に寄り添う企画やものづくりに活かしてきたのです。
この企画力や商品の調達力、そしてカタログ制作力を活かせば、トップ産業とは異なる新たな企画やものづくりで、直接消費者の方々に私たちの商品を訴えることができます。さらに、卸先を介さず直接お客様と交流し、意見を聞くこともできます。
そこで私は、新規事業として小売事業を始めようと考えました。卸だけでなく独自の販売チャネルを持つことがリスクヘッジにもなります。社長になって間もなかった当時、父親との違いを出さなければ!という若い考えがあったことも事実です。
さっそく、取引のあったデザイン制作会社など2社との共同事業として、通販事業の立ち上げに向けて動き始めました。人材を採用し、綿密な事業計画を準備し、ロゴマークまで作成。「準備万端、さあ始めよう」というところで、一社が急に降りてしまいました。
その時に言われたのは、「なんの経験もないあなたについていって、失敗の実例を作りたくない」という言葉。悔しくて、仕方がありませんでした。
社長になりたての35歳だった私。その経験の少なさと若さが世間からどう見られているかを思い知らされ、トップ産業の実績に頼らず、自分自身の信用を築かなければと痛感しました。
「まずは本業を大事にしなさい」と言われ、その言葉の通りに新規事業を断念して本業に専念。システムの更新や組織再編、社内環境の整備などに注力しました。しかしそれでも、新規事業への思いは消えませんでした。
1年半後、もう一社のパートナー企業から「やっぱり、やりましょう!」と背中を押され、再度挑戦することに。計画を見直した上で、2006年に食品をメインに扱う通販会社「優生活」を設立しました。設立メンバーは、トップ産業から異動させた社員と、新たに採用した通販経験の豊富な人材を含む5人です。
トップ産業の取引先からも「この時勢に新規事業を立ち上げるなんて勇気がある。期待しているよ」と応援され、さっそく取引を始めてくれる会社もありました。
優生活の目標として掲げたのは、規模拡大よりも、お客様に喜んでもらえる会社にすること。未来が、夢が広がっていく感覚でした。
ところがそこは、新参者には厳しい世界だったのです。
※ 次回、第八章は10月16日(水)に公開です。