連載コラム「トップホールディングス誕生物語」

連載「トップホールディングス誕生物語」COLUMN

1964年に父が創業したトップ産業を引き継いで、2代目として歩んできた歴史をトップグループ3社設立とともに振り返り、2023年にグループを統括するホールディングス会社設立までを記した連載コラム「トップホールディングス誕生物語」。 多様な時代背景の中で生きた激動の歩みとトップグループの成り立ちが、お読みいただく皆様の未来につながることを祈りながらお届けします。

【第十章】ボツ続きの商品企画…心砕かれた末に「愛着良品」の社員に訪れた大転換点

トップ産業は長年、「主婦モニター会議」を通して生活者の声を聞き、商品企画に活かしてきました。2002年には、この独自のスキームを活かしたものづくりを「愛着良品」として商標登録しました。ブランドそのものではなく、商品を作る仕組みや考え方も含めて商標登録することは今では難しく、当時でも画期的なことでした。

それから12年後の2014年、愛着良品のリブランドに着手しました。「愛着良品になるための認定基準9か条」を設け、オリジナリティや使いやすさなどの社内基準をクリアした商品だけを「愛着良品」と認定することにしたのです。ただ、この決定には商品開発部のごく一部の社員が関わっているだけで、厳格な運用はできていませんでした。

愛着良品を今一度社員みんなで育てよう、と第3期のリブランドをスタートさせたのが2022年。未来の幹部候補生がさまざまな部署から集まり、愛着良品の認定基準について話し合いました。そして2023年、トップ産業とは独立した会社として、長く愛される商品を開発・販売するべく「愛着良品株式会社」を設立しました。初期メンバーは、トップ産業で商品開発に携わってきた4人の社員たちです。

目指すは、暮らしを豊かにする確かな品質の商品を作り、生活者の笑顔を生み出すこと。設立以来、社員たちは1人につき毎週2案件のアイデアを出し、商品開発に向けて動いてきました。

しかし、商品化はなかなか進みませんでした。認定のハードルが高すぎたのです。
愛着良品は、初回認定から始まり、中間認定を経て最終認定まで3つの段階をクリアして初めて商品化されます。初回では、愛着良品の社員自らが「すでに類似商品がある」「この企画では売れない」と商品案の3分の1を落とし、中間認定では、トップ産業のさまざまな部署の社員による審査でさらにドロップアウト。試作段階で品質基準を満たせず、ボツになることもあります。年間で320件のアイデアを出したうち、一期目に商品化が実現し販売に漕ぎ着けたのはわずか3商品でした。

社員は、未来のヒット商品を作るために毎日頭をひねっています。生活者の声に丁寧に耳を傾け、市場調査をし、コンセプトを決め、パッケージデザインやネーミングまで考えた上で、綿密に作成したプレゼンテーション資料を携えて「絶対に商品化する!」という決意で毎週の認定会議に臨むのです。それが、ボツになるくやしさ。常に考えることを迫られながらも成果に結びつかないことに徒労感を抱き、心が折れそうになっている姿も見られました。

その風向きが一気に変わったのが、2024年9月。認定の難関を乗り越えて商品化に至った吸水アームバンド「おそでさん」が大ヒットしたのです。
物販の仕事をしている私たちにとって、商品がヒットすることは、目の前の世界が変わるほどの大きな転換点です。担当社員だけでなく、周りの社員たちも「自分たちにもできる!」という希望を取り戻してくれました。今まさに、社内がやる気に満ちあふれています。

私は、ヒット商品を生み出す全ての要件は開発プロセスにあると考えています。プロセスには企画やデザイン、ネーミングとさまざまな要素があり、その全てが備わって初めてヒット商品が生まれます。この中で一番大切なのは、パッション。挫けそうになりながらも、「自分たちがヒット商品を出す」と強く信じてきたからこそ、この結果が生まれたと思っています。

会社はまだ発展の途上ですが、商品化が進行中のものもあり、愛着良品のタネはたくさんあります。一期目で社員の経験値も増えました。彼らのパッションがこれから先必ず、会社を成長させてくれると信じています。