連載コラム「トップホールディングス誕生物語」

連載「トップホールディングス誕生物語」COLUMN

1964年に父が創業したトップ産業を引き継いで、2代目として歩んできた歴史をトップグループ3社設立とともに振り返り、2023年にグループを統括するホールディングス会社設立までを記した連載コラム「トップホールディングス誕生物語」。 多様な時代背景の中で生きた激動の歩みとトップグループの成り立ちが、お読みいただく皆様の未来につながることを祈りながらお届けします。

【第八章】2年目の大逆転。信じれば、真の力になる

お客様により良い商品を届けたい、と夢を抱いて立ち上げた優生活でしたが、1年目は逆風にさらされました。競合他社からの妨害や、食品衛生法に関する行政からの厳しい指導…社員はその対応に夜遅くまで追われました。

最大の誤算は、売り上げでした。
優生活の目玉商品はカニ。年間で最も売り上げが上がる勝負の12月、大量に新規のお客様を獲得するというストーリーを描き、予算をかけて新聞広告を次々に打ちました。ところが売り上げが一向に伸びず、億単位の資金を無駄にしてしまったのです。

その様子を見て、当初は応援してくれていた社内外の人たちも急に冷めていきました。取引先からは本業への影響を危惧され、「やめないならトップ産業との取引も止める」とまで言われました。
まさに四面楚歌です。「やらなければよかった」という思いが、頭にぐるぐると回っていました。でも、私がそれを言葉に出したら終わってしまう。

翌年も鳴かず飛ばず。累積赤字が蓄積し、次の年末商戦で伸びなければ廃業も覚悟していました。唯一の救いは、社員のモチベーションが高かったことです。年末に向けて、「これが最後の勝負や!」と奮起してくれました。私自身も、「絶対になんとかなる」と根拠もなく口に出していました。

判断というものは、いろんな材料があって下すものです。しかし決断は、判断材料がない中で下すもの。優生活を続けるかやめるか、なんの判断材料もない中で「やる」と決めたことは、まさに決断でした。成果が出ると信じよう、自分たちの力を信じよう、それが真の力になる、と。

そして迎えた2期目の年末商戦。いきなり売り上げが大爆発しました。
出荷業務に追われ、社員たちも寝られないほどの忙しさです。
最終日の12月31日には、優生活の立ち上げ時に社員として入ってもらった、通販経験の豊富なバイヤーに「こんなに仕事が楽しいと思ったことは今までにない!いい思いをさせてもらって、感謝や!」と抱きつかれました。その瞬間は今でも忘れられません。みんな連日の激務ながら、生き生きとしていました。

「お客様との交流」という当初の目的も果たされました。今も、注文を受ける電話などを通して、こんな商品がほしい、という声をお客様から直接聞くことができています。毎月何百件も企画のヒントをもらえるのです。その声を受けて、新しい仕掛けも立てられるし、軌道修正もできる。独自のマーケットを持つことで、新たな柱を確立することができました。